
結論から言えばやらせではありません。
プロレスは、「シナリオがあるガチンコのエンターテインメント」です。
「シナリオがある」という部分が紆余曲折な解釈をされて、ヤラセという捉え方が浸透していったのは間違いないでしょうね。
もしこの記事を最後まで読んでもらえたら、プロレス好きが増えるかも、いやいや、プロレス大好きになっちゃうかも!そんな気持ちで今回は書きました。
ぜひぜひ、最期まで読んでくださいね。
この記事の目次
プロレスのルールにやらせは含まれているのか、と思わせる背景
あなたはテレビでプロレスを観たことがあるでしょうか?
ワザが決まると痛そうな顔をしますよね?バチーン!という大きな音も出たりしますよね?時にはマットに叩きつけられたりもします。
ガチで叩かれているのも、本当に痛いのも、プロレスラーたちは現実に味わっています。
あのリアルな感じは、たとえ会場にいなくても、テレビでもそれは伝わってきますよね。
なのに、どんな背景があってやらせが疑われているのでしょうか。
プロレスにはストーリーがある
プロレスには、「〇〇シリーズ」と銘打ったビッグマッチと呼ばれる大きな試合があります。
そして、このビッグマッチ・シリーズをできるだけ盛り上げるために、誰と誰が抗争している、集団集団の抗争=軍団対決、など、背景を脚色した台本があります。
※この台本は、ブック、シナリオ、アングル、とも言われます。
アングルは、演劇のように通し稽古を何度もやる訳ではなく、大ざっぱに決められるようですが、ある程度の範囲で、結果まで決まっています。
この「ある程度」というところが曖昧なので、ヤラセ疑惑が段々大きくなってしまうのでしょうが、ファンの立場からすると、勝手に妄想しながら、「あーでもない、こーでもない」と楽しめる要素にもなります。
このあたりは、ドラマの筋書きを予想して楽しむのと似ていますね。
オープニングVTRで感情移入を誘う
ビッグマッチの前に流されるVTRには、この試合が組まれた背景、対戦車が戦う背景、などが紹介されます。
ファンはこれから始まる試合により感情移入しやすくなるのです。
フルコース料理の前菜みたいなものですが、これは絶対必要!な位置づけになっています。
ステーキを焼く音とニオイでステーキが食べたくなる、ビッグマッチゲームのシズルみたいなもんですね。
この動画を観てください。
こんな感じで始まると、選手の登場前からお客さんはヒートアップできます。万全の体制を作り上げて試合が始まります。
ワザと技を受けるのは『プロレスの美学』
「なぜ、わざわざ相手の技を受けるんだ?」
というのも、やらせ疑惑に厳しい人の共通した意見ですよね。
ここで言ってしまいましょう。
プロレスは受けの美学だよ!
相手の強烈な技を受けても、なお逆転して勝ったりする
マットに叩きつけられても汗で輝く筋肉で立ち上がる
あの痛みをこらえる表情、殴られたときの鈍い音。
大げさなジェスチャーはあったりしますが、やらせなんかじゃありません。
あの姿を見ると、やっぱり本気で戦っているんだと思える。
ワクワクする気持ちを抑えることなんてできません。
ヤラセとガチの境界
曖昧は疑惑の余地を生み出すものですが、プロレスはヤラセだ!とか、八百長だ!とか言う人もこの曖昧さを突いてツッコミを入れてきますね。
プロレスの「受けの美学」が壁になっているのか?
私がプロレスの実戦を見た経験は、大学のプロレス同好会くらいしかありませんが、プロレス好きが集まっているだけあって、フライングキックとかバッチリ決まっていました。
まぁ大学生なので、時おり本気で漏れる「うげっ!」とか「イタタ!」とかはご愛嬌。
技を受けた選手は吹っ飛ぶし、ラリアットが決まるとそれなりの強打音が会場に響きます。
やがて皮膚が赤くなり、ミミズばれになっていく。
素人レベルでも、あれは痛いに決まってる。
最初は「うわぁ…」とか言ってたお客さんも、だんだん引き込まれて興奮していく。
時には笑いがあったり。
今にして思うんでございます。
「せっかく大学入ったのに何でこんな事をやってるんだ?」と思った人が、やらせ疑惑でガチガチになって楽しめない人になっちゃうんだろうな、って。
多少大げさなポーズやジェスチャーはご愛嬌。これがあるから、悲壮感に支配されてしまうことはありません。
相手の技を受けて、耐えて戦う、その姿に観客は感動し、熱くなります。
「やらせ」と表現するならば、「どんな技をかけられるかわかっていて、敢えて受ける」というところが「やらせ」です。
プロレスはショーです!
ショーを盛り上げるためにシナリオがあります。シナリオ通りに試合を運んで、クライマックスの興奮をお客さんに味わってもらわなくてはなりません。
シナリオのない真剣勝負にはストーリーなんてありません。
ガチ100%だけど、すべての技をかわし続ける試合など、盛り上がるわけがないんですよ。
盛り上がるためには演出が必要なんです。
どんな技を繰り出すか、痛がってる間に決めポーズ、そんなスムーズな流れを作り出すためにも、台本が必要不可欠!なんです
技を受けるのは観客を楽しませるため
「観客を楽しませ、興業を盛り上げるため」に敢えて技を受ける。
だからこそ、受けの「美学」なんです。
来るとわかっているパンチやチョップを身体を張って受ける。
両足をつかまれてグルングルン振り回されてぶん投げられる。
真っ逆さまにマットの上に落とされる。
観客を楽しませるために”ガチ”でやっています。
プロレスは観客を盛り上げる格闘技、と表現して間違ってはいないと思います。
大技が決まった時の「うぉおおーッ!」という観客の声。
それが耳に入った時の高揚感。
これこそがプロレスラーたちの原動力なのではないでしょうか。
流血を見せるのは理由がある
技の後に自らマットに頭を強くこすりつけて流血させたり、打撃を受けた際に自分で太腿等を叩いて大きな音を出して流血、といった演出もあります。
思いがけず流血になった、という場合もあるでしょう。
観客を引き込むために血を見せる、っていうのはプロレスにしかない見せ方です。
試合中の流血が命に関わるということは少ないと思うので、もう慣れっこ、もうお決まり、そんなファンも多いのではないでしょうか。
シナリオがあるのにどうして怪我をするの?
プロレスにもいくつかのルールがあります。
こぶし(ナックル)による殴打禁止
急所(金的)攻撃の禁止
凶器の禁止
パイルドライバーやブレーンバスターのような大技は、相手側の協力が不可欠と言われています。
あれを一般人にやってしまったら、間違いなく命に関わるでしょう。
決して素人が真似をしてはいけないプロレスの大技。
その大技をプロレスラーたちはかけ合います。
怪我をしないように筋肉の鎧で身を固め、ルールがあって、シナリオがあるのに、なぜ怪我をしてしまうのでしょうか?
その理由としては、タイミングのズレ、しかないのではないでしょうか。
前のワザから回復していないところに次の大技がくる。
頭がフラフラしているところに、バックドロップを受けなくてはならない、とか。
まさに命がけ、死んでしまうかもしれない危険と背中合わせの状況、です。
最高潮に盛り上がっているとか、現場で戦っている選手にしかわからない待ったなしのタイミングというのもあるのでしょう。
プロレスラーは本当に命をかけて仕事をしてるんだな、と思わずにはいられません。
現役プロレスラーは語る
小島聡選手のTwitter
プロレスが、ヤラセかヤラセじゃないか?なんて愚問だと思う。痛くないのに痛いふりをして油断させたり、痛いのに痛くないふりをして意地を張る時もある。相手選手、お客さんとの駆け引きも凄く重要だし、ただ単に勝敗を競っいてる訳じゃないから。ただ、どう言われても、命だけは張ってます。
— 小島 聡【SATOSHI KOJIMA】 (@cozy_lariat) August 22, 2013
コチラは丸藤正道選手のTwitter
人が命をかけてやってるものをそんな風に言う人を相手にしてはいけない。
人の本気をバカにする人間は本気で物事をした事の無い人間だと思う。さみしい人間だと思わないか?気にせずおもいっきりプロレスを応援してくださいね🎵 https://t.co/xM1YNuYEHd— 丸藤 正道 (@noah_marufuji_) November 9, 2017
小島聡選手と丸藤正道選手はこう言いたいんじゃないだろうか?
私の推測がいくらか入っていますが、両選手の心の内を書いてみました。
小島聡選手
誰が何と言おうと、こっちは命を懸けてやってるんだよ。
丸藤正道選手
自分はガチでやっている。誰かの本気をバカにするような人間は、自分が本気になったこともないんだろう。
プロレスを好きな人が理解してくれたそれで良い。
プロレスは、時には選手が亡くなったりすることもありますが、私はそれが“本気の表れ”だと解釈します。
だからこその両選手のTwitterなんだと思います。
その凄さを素直に感じて、”面白い!”と受け止めるって、人としてとても大切なんじゃないでしょうか。
勝ち負けはどう決まる?ルールはあるのか?
プロレスの試合展開や勝敗は決まっています。
ドラマの台本のように文章で明確に書かれているわけではなく、アウトラインを口頭で伝えて口裏合わせをする、というのが主流のようです。
決め技や勝ちに行くタイミングなどを決めないと、制限時間内に終わらせることができません。
時間オーバーはともかく、お客さんはお金と時間を使って来てるわけですから、早く終わってしまったのでは興行として成り立ちません。
目の前で試合をしながら、時間いっぱいお客さんを楽しませて満足させる、そのために事前の打ち合わせが必要、というのは納得できるのではないでしょうか。
勝敗が決まっていてもワザは本気にして本物
台本があっても、技をかける側、技を受ける側、両者とも本気です。
骨折や脳震盪などは日常茶飯事で、常に命の危険と隣り合わせ。この本気の技と緊迫感に観衆は酔いしれる訳ですよね。
本気や真実というのは心の芯に響くものです。
残念ながら心に届かない、そんな人もいるみたいなのですが…
「なぜ俺たちの本気をわかってくれないんだ!」上で紹介したTwitterは、プロレスラーたちの心の叫びです。
アドリブや演出はゼッタイ必要な要素
360度お客さんに囲まれたリング上で、「どうお客さんを楽しませるか?」を常に考えながら選手は動いています。
力を入れて蹴る、という動作をしつつ、自分の太ももをパチン!と叩いて音を出したり、いろいろな工夫もしている。
上手な選手は自然にこれをやって、さらに表情も作るので、会場がワッ!と盛り上がります。
アメリカのプロレスにはシナリオがある
アメリカ合衆国のプロレス団体及び興行会社である WWE(World Wrestling Entertainment, Inc.)は、公式にシナリオが存在することを認めています。
試合の流れを打ち合わせている、ということを確認するにはこの動画で十分でしょう。
英語が苦手でも動画の流れ(2:45~)で理解できます。
綿密に打ち合わせる訳でもなく、簡単に流れを決めて、あとは実演で観衆を盛り上げています。
お見事!スゴい!としか言えません。
シナリオ=ヤラセ、ではなく『ショー』の一環
アングル(英語: Angle)は、プロレスにおける隠語の一種で、試合展開やリング外の抗争などに関して前もってそれが決められていた仕掛け、段取りや筋書きのこと。試合自体の進行は「ブック」と呼ばれ、アングルはリング外でのストーリー展開を指すことが多い。アングルの組み合わせや展開が観客動員に大きく影響するため、試合内容と同じ重要性を持つ。
引用元:ウィキペディア
「ブック」には、どんな技をかけられて、どんなふうに演じるか、が書かれています。
技をかけられた後しばらく立ち上がれない、ということになっていれば、かけた側は決めポーズを取る時間があります。
決め技で盛り上げ、決めポーズでさらに盛り上げる、というのはブックがあるからできるんです。
真剣勝負でそんな油断はできませんよね。
日本のプロレス団体の場合、演技の内容や流血の有無など、ブックがあると公表されてはいないものの、シナリオはあるというのが一般的な認識です。
ブックの存在が八百長疑惑につながっている
ブックは八百長の証拠、そんな見方をする人もいますが、興行側に取ってもファンに取ってもブックは必要です。
観客はプロレスを堪能できる
選手が怪我を回避できる
どこまでブックで決められた内容で、どこがアドリブなのか、その境界を見つけるのもプロレスファンの楽しみの一つなんです。
ゴングが鳴った後は、選手たちの白熱の演技(ファイト)に夢中なので、プロレスファンはブックの存在すら忘れますよ。
ヤラセや八百長を気にしなければプロレスを楽しめるのにね。
ホント残念。。。
プロレスはアングルがあるから面白い
アングルは、ベルト争奪にまつわる因縁や、選手間の抗争など、プロレスの試合の背景にあるストーリーなどの筋書きです。
なぜプロレスラー同士が熱く戦わなければならないのか。
その理由付けをするのがアングルです。
ドラマに感情移入して主人公を応援したくなるように、プロレスファンは選手に対してそんな感情を抱きます。
それがアングルの効果です。
アングルが作り出した背景が客寄せの目玉になって、お客さんが入って興行主は大喜び、レスラーはやる気が出る、お客さんは大満足、Win-Winの構造がそこにはあります。
素人のケンカ、それも知らない人なら尚更、見ているだけでも面白いのに、筋肉男たちのド派手な抗争が見れちゃうんですから、プロレスが面白くないわけがないんです。
なぜプロレスは興奮の頂点へと駆け上がらせてくれるのか?
格闘技には人を惹きつける力があります。
生死をかけて戦う姿に、特に途中の困難が大きいほど、見ているだけでもゾクゾクします。
この種の映画やドラマには、プロレスと共通する面白さがあると思いませんか?私もこんな作品にハマりました。
映画『グラディエイター』『ブレイブハート』
海外ドラマ『スパルタカス』
奴隷が自由を掴む、上官にはめられた男が復讐する、特にビッグマッチは、アングルの効果もあって、ローマ時代を扱った格闘系の映画やドラマのような要素を強く含んでいると思います。
特に途中の困難が大きいほど、
アングルで作り上げた因縁の背景を引っ提げて
生死をかけて戦う姿に、
日本各地でビッグマッチ・シリーズを展開して観客を酔わせる
筋骨隆々の男たちが、リング上で華麗に、時にはのたうち回って、時には血まみれで格闘する姿が共感を呼びます。
試合が始まって、敵側が反則ワザを繰り出す
相手のレスラーが血まみれになっていく
お気に入りの選手が流血に耐えて頑張る
だんだん感情移入して一緒に戦っている感じになっていく
見せ場がキタ!反則野郎に大技を決める瞬間
会場がウオォーっ!!!と一体になって大興奮
どこの誰かもわからない人たちと、プロレス大好きという唯一の共通点でつながり、苦しみながら勝ち上がっていく選手を気持ひとつになって応援する。
勝利が決まった瞬間、興奮が頂点に達してウオォーっ!!!となる。
プロレスの醍醐味ですねー。
負け続けるプロレスラーにもメリットがある?
負け役の選手はイヤじゃないのかな?と疑問に思いますよね。
シナリオに書かれているのかも知れませんが、負けて泣く選手もいますからね、本当に悔しいんじゃないかとも受け取れます。
でも、負けることはマイナスばかりじゃない気もするなぁ。
ゴツい筋肉男が負けて悔しがっている姿って、けっこう、応援したい!とう気持ちを集めているんじゃないでしょうかねー。
プロレスも、勝つ選手がいれば負ける選手がいて成り立つわけですが、ヒール役でも愛嬌のある選手とかだと、ついつい、頑張れっ!てなりますよ。
プロレスはヤラセ、に対しての「イエス」「ノー」は自分で判断しよう
ここまで読んでくださってる方なら、
シナリオがあるからこそフルコースでお客さんが楽しめる
選手たちはお客さんを楽しませようと命がけで試合をしている
といったことが分かっていただけたのではないでしょうか。
プロレスは、シナリオのある地上最強のエンターティメントなのです。
興行として仕組まれている部分はありますが、「やらせ」でも「八百長」でもありません。
「やらせ」や「八百長」が行われてブラックなお金が動きだせば、プロレスラーたちが許しはしないでしょう。
そんな正義感があるからこそ、選手たちは絶対に手抜きをしません。
手抜きをしないからこそ、「やらせ」や「八百長」と言われると面白くないんです。
映画やドラマは台本があるのに、みんな感動して泣いたりしますよね?
「台本があるんだから感動なんてしないよー!」とはなりません。
評価の本質って何でしょうか?
物事の本質って何でしょうか?
プロレスは、評価される物事の本質をしっかり備えています。
プロレスにルールはありますが「やらせ」はありません。
ひとりでも多くの人がそこに気付いてほしいと思うのです。